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男と女の「おかしな!?」ハナシ

男の仕事?女の仕事?

あなたの身の回りにも時々起こる、
「これってどうなの?」
「おかしくない?」という話。
このコーナーでは、毎回、
「男と女のちょっとおかしな!?ハナシ」を、つぶやいてもらいます。

男の仕事?女の仕事?

今回のつぶやき主は、就活を目前に控えた保育科の学生、ハルオさん。
親から言われたことについて友人とあれこれ話しています。
ハルオ:あ~あ。就職先、どうしようかなぁ~??

ナツコ:何を悩んでるの? 
     今や男性保育士は、時代の先端じゃないの(笑)!!

ハルオ:昨晩オヤジに
     「保育士の給料じゃぁ、父さんみたいに家族を一生養っていくのは無理だろう。
     どうしても保育士になりたければ、公立の保育所に公務員として勤めろ」
     なんて言われてさ。
     何を今さらって感じだけど、何だか気になって。

ナツコ:それはきびしいわね。
     そう言われても、公務員は採用が少ない「狭き門」だもんね。

ハルオ:実はウチは姉貴も保育士で、
     親は、私立の保育士の給料が安いって知ってるから、
     そういうことを言うんだってことはわかってるんだ。
     でも姉貴が就職する時には「やりたいことをやればいい」って、
     給料のことなんてひとことも言われてなかったから、
     何だかオレ的には反発を感じるんだよな。
アキコ:そっかぁ~。
     私は保育実習に行って「自分は保育士に向いていない」って思ったから、
     親に「一般企業に就職しようと思う」って言ったら、
     「せっかく保育士の資格を取ったんだから、
     使わなきゃもったいないんじゃない!」って言われちゃった。

フユオ:オレは逆だぜ!
     「子ども好きだし、保育関係の仕事をしたい」と思って
     親を説得して今の学校に入ったのに、
     入ってからもずっと「保育所なんてほとんどが女性の職場だろ。
     お前、その中でホントにやっていけるのか?
     資格は取っておいても損はないだろうが、一般企業も考えてみたらどうだ?」
     って言われ続けてる。

ナツコ:私の場合、「あんたは小さい時から保育所の先生になるのが夢だったもんね。
     もし結婚したり子どもが生まれて仕事を辞めることになっても、
     自分の子育てに役立つからいい仕事よね」って母からいつも言われてる。

ハルオ:自分の将来だから自分で決めればいいのはわかっているし、
     オレが公務員試験に受かれば話は簡単なんだけど、
     イヤイヤ、そういう問題じゃぁないか…(苦笑)。
◆ハルオのつぶやき・・・
子どもが好きだから子どもに関わる仕事がしたいだけなのに、
男子だったら「保育士は給料安いから」って反対されて、
女子だったら「せっかく資格を取ったのに使わないのはもったいない」
って言われるって、何かおかしいような気がしてきた。
だいたい、何で保育士は専門職なのに、給料が低いんだよ?
それに女子は「もし辞めても・・」なんてよく言うけれど、
男子には「結婚して仕事を辞める」なんて選択肢、初めから無いようなもんだけどなぁ。

◆ナツコのつぶやき
「男女関係なくやりたい仕事ができたらいいのになぁ」
「男性の保育士ってカッコいいなぁ~」なんてぼんやり考えてたけれど、
実際に就職する時期になって初めて、
ハルオ君のお父さんのような考え方があることを、意識したわ。

◆アキコのつぶやき
私、体を動かすのが好きだから、保育の仕事もいいかなって思ってたんだけど、
保育実習に行って「一日中、子どもの相手をするってしんどい~」って思った。
保育とか介護とか看護とか、誰かをお世話する仕事は、
私には向いていないような気がするんだけどな。
あぁ~誰か私の身の回りの世話をしてくれるオトコはいないかなぁ~。

◆フユオのつぶやき
確かに今までは、女の人がほとんどだったかもしれないけれど、
保育所は「女の職場」なんて言われるのは嫌だな。
【ミニ知識】   
えっ!男性は「助産師」になれないの!?
 
保育士は昔は「保母」と呼ばれていましたが(保母資格を持つ男性は便宜上「保父」と呼ばれていた)、1999年4月の男女雇用機会均等法の改正で、性別を示す職種での求人が禁止されたことに関連して「保母」から「保育士」に正式に呼称が統一されました。
同様に看護師や保健師も昔は「看護婦」「保健婦」と呼ばれていたことは広く知られています。
「母・婦」どちらも元々は女性の職業だったということの表われですね。
ところで昔は「産婆さん」などとも言われていた助産師ですが、保健師助産師看護師法には「『助産師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう」とあり、助産師になれるのは女性に限定されています。
男性の産婦人科医や看護師はいるのに、男性の助産師はいないというわけです。
みなさんご存知でしたか?

横からちょっと言わせて

専業主婦もパートも経験した<br>関西学院大学社会福祉学科教授 <br>今井小の実さん
専業主婦もパートも経験した
関西学院大学社会福祉学科教授 
今井小の実さん
私の大学時代、ハルオさんと同じ夢を持っていた男子学生がいました。
まだ保育士ではなく「保母」と呼ばれていた時代で、男性の保育士は「保父」さんと呼ばれた非常にめずらしい存在でした。
私自身も「保母」さんになりたい時期があったのですが、「身体が弱いから、小さな子ども相手の仕事は無理」と親に反対され、「逆上がりや平均台のテストがある」と噂で聞いて、「超運動音痴な自分には無理だ」と諦めていました。
ですから、彼の気持ちはよく分かりましたし、子どもが好きですぐに仲良くなれる才能があり、運動能力も高い彼なら、「保父」さんにふさわしいと信じて、応援したいと思っていました。
でも本格的な就職活動を始めると、彼は一般企業で就職を探し始めました。
ハルオさん同様、周囲の人に反対されたのではないかと想像しています。
このオハナシのなかでも指摘されていましたが、保育士のお給料は(あくまでも平均ですが)、男性の他の職種に比べれば確かに低いです。
それは保育士だけでなく、これまで女性が占有してきた職業、職種の給与が低く抑えられてきたためです。
たとえば、専門職性が高い看護師の職でも、同じ医療の現場で働く放射線技師や臨床検査技師と比べれば、給与が低いことを指摘した研究者もいます。
最初はほぼ同じ金額で出発しますが、徐々にその差が拡がっていくというのです。
これにもやはり看護師が、女性の職業だったという歴史的な位置づけが影響していると考えられます。
ではなぜ、女性の仕事とされてきた分野の賃金は低いのでしょうか? 
それは「男は仕事、女は家事・育児」という性別役割分業の規範が、男性には家族を養えるだけの家族賃金を、そして女性には家計補助的な賃金をという労働条件を規定してきたからです。
大学時代に夢を持っていた彼もきっと、周りに説得され、「保父」さんの賃金では将来、結婚できても、妻も子どもも養えないと気づいたのではないでしょうか。
子どもが好きで選んだ職業が、自分の子どもの生活を脅かしては本末転倒ですから・・・。
当時は想像さえしていなかったのですが、彼は大学卒業後、一般企業に就職し、3年後に私の夫になりました。
原稿担当 : NPO法人 あなたらしくをサポート(愛称:らしーく)
イラスト : 林やよいさん